13番目の恋人
私は、今までお酒の席というものにあまり縁がなかった。こうやって、社会人になって、わいわい誰かと飲むのは初めてだった。

「お酒、強そうよね」

そう言われて、そうなのかなと思った。お酒は「美味しい」と感じたから。

少し皆が酔ってきた頃
「折角だから、色々聞いてもいい?」
先程、『話してみたかったの』といった女性、えっと……庶務の新庄さんがそう訊いてきた。確か、2つ3つ年上だ。

「はい、何でも」
そう返事したタイミングで新庄さんの視線が私の背後に移り、私はその方向へと振り返った。

それが誰かを認識するより早く、……北口さん、同じく庶務の彼女が
「室長! お疲れ様です、ここ、ここ! 」
そう言って、到着した野崎さんを自分の横へと促した。

わっと一気に女性達の注意は彼へと向かった。

「お疲れ様」促されるまま腰を下ろした彼が私に気づくと、少し微笑んだ。

「そうだ、見張り役! ちょうどいいね、香坂さんの前の席」
大宮くんが私にだけ聞こえる様にそう言った。

「見張られなくても、何もないもん」
そう言い返すと、大宮くんの猫っぽい目が見開かれた。

「え、何?」
「ふうん、そんな話し方もするんだ」
と、言われてしまった。飲み会とはいえ、会社の人達ばかりなので、まずかったのかな。
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