狂犬に愛される覚悟
「ゼロと付き合ったばっかりに、こんな風に狙われて……」
「え……?」
「君は、俺達の餌みたいなもんだよ。
だってゼロの女なんだから。
君さえ、手に入ればゼロを地獄に落とせる」

「餌……」
あーそうか。
零王が毎日送り迎えするのには、こんな理由があったのか…………

今更、こんなことに気づくなんて………
バカだ、私は。

「あの…私は人質なんですよね?」
「うん、そうだね」
「だったら、私が死んだら零王はここに来なくてすみますよね?」
「は━━━?」
そう言って、愛妃は宮城のナイフを持っている方の手を掴んだ。

ここで自分のお腹を刺せば、零王は何もしなくて済む。

でも…そんなこと怖くてできない。
愛妃は、手が震えていた。

「お前…何を……!?」
「私は!零王の足枷にはなりたいくない!
零王と付き合う時に、覚悟はしてたつもりです。
だから、ここで死ねば………」
「やめろ!離せ!!」

「零王の優しさにこれ以上甘えたくない!
零王に、暴力なんて似合わない!
零王は、狂犬でも野獣でもない!
可愛い犬なんだから!」
「おい!やめ━━━━━━」

愛妃は大きく深呼吸して、ナイフを自分のお腹に突き立てた。

グサッと刺さり、言葉にできない痛みが走る。
目の前が眩み、パタンと倒れた。

そこへ零王達がバイクを走らせやって来た。
バン━━━━━!!
「愛妃!!
━━━━!!!」
零王は、倒れている愛妃を認めるとゆっくり愛妃の方に足を進めた。
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