狂犬に愛される覚悟
狂犬の仕事
次の日愛妃をショップに送り、その足で律の事務所に向かった。
律は、組長の息子で若頭だ。
「はよ!律」
ガン━━━とドアを開けて入る。
「零王さん、お疲れ様ですっ」
律の部下達が、揃って挨拶する。
ソファに足を組んで座り、煙草を咥えた。
すると、律の部下が火をつけてくれる。
どこに行っても、みんな零王を腫れ物のように扱うのだ。
それは零王があまりにも恐ろしく、いつどこでキレるかわからないからだ。

若頭である律でさえ、零王には勝てない。
実は組長が零王を可愛がるのも、怒らせないように気をつかっているからだ。

テーブルの上に足を乗せる、零王。
「律~昨日の夜の話だけどさ」
「んー?」
「絶対、愛妃に言うなよ!
あと、じじぃにもちゃんと断っとけよ!
じゃねぇと、殺るよって言っとけよ!」
「わかってるよ!
てか、相変わらず態度わりぃな…!零王」

愛妃の前では絶対しない。
テーブルに足を上げたり、言葉遣いもそうだ。

これが、本当の零王なのだ。
愛妃に素が出せないのは、嫌われたくないから。
その一心で、必死に犬系男子を演じているのだ。

「だって、暇なんだもん!」
「その姿…愛妃ちゃん見たら、どうなるんだ?」

ガン━━━━!!
カラーン!!!
零王がテーブルを蹴って、上に置いていた灰皿が少し飛んだ。
「律、喧嘩売ってんの?」
「売らねぇよ!そんな怖いもの知らずじゃねぇよ…!
てか、こえーよ!」
「早く、掃除終わらせようぜ!
今日愛妃、仕事終わるの早いんだよ!」
「わかったよ」

そう言って、事務所を出たのだった。
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