魔女は今日も、忙しく恋する!
 しばらくして、魔女は身体に重みを感じた。

「…ん…なに…?え…」

 誰かが自分の身体に抱きついている。

「っ…誰!?」

 魔女は魔法も使えず、振り解こうとすることしか出来ない。
 そうこうしている間に、朝日がだんだん昇ってきて、何が自分に起きているのかが見えた。

「っ…ダーク…!??」

 魔女が想いを寄せていたインキュバスが、自身の上に身体を寄せて抱きついていたのだ。

「な、なんであなたが!?なんでここが!?」

 インキュバスはこの城に来たことなど無かった。
 ましてや、場所などわかるはずもない。彼から聞かれたこともないのだから。

「ローゼ…好きだ…!」

「え…」

 その突然の言葉と、初めて見た彼のとても真剣な顔に魔女は呆然とした。

「…俺を抱き締めて?ローゼ…」

「い…嫌っ!!」

「なんで…ローゼ…」

 魔女は激しい不快感と違和感に襲われた。
 悲しげにするインキュバスの身体をさらに押し返す。

「嫌よ!!…どうせあなたは私だけを見たりなんてしないでしょう!?私だけを…」

「俺は見るよっ!ローゼだけ!!好きだよ!!頑張ったんだ!俺を見て!!」

「…!」

 またさっきとは違う違和感。
 魔女はそっと相手を抱き締めた。

「…好きよ…『あんた』が好き…!ねぇ…私のために、頑張ってくれたの…?」

「うん、頑張ったよ…!!」

「大好きなバラの香り…その…ありがとう…。でもね、あんたとこうしているときはね、もっと好きな匂いがあるの…声も…姿も…」

「ローゼ…」

 インキュバスは泣きそうになっていた。
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