魔法の恋の行方・魔女の媚薬(シリーズ3 グリセラとリーディアン)

狩猟の館(大広間)15-17ページ

<狩猟の館・大広間・翌日・13時>

今日の午後は
リードとクリスが生徒たちに、
ダンスを教える事になっていた。

高等学校の入学式後、恒例のパーティがある。

そこで男子生徒は、女性をエスコートし、ワルツを踊らなくてはならないのだ。
貴族の社交界デビューの準備も兼ねている、大切なパーティだ。

大広間には、まだ誰も来ていない。
「僕は音楽担当!ピアノやるから」
クリスはすぐに予防線を張った。

クリスの容姿は、女役にぴったりなので、学校時代はよくからかいのネタになっていた。

「いいよ。後は僕の方でやるから」
リードは苦笑して答えた。

「卒業式のプロムのパーティーの
相手は、誰にしたんだ?」
クリスが聞いた。
「婚約者だ」

リードはネクタイを直しながら
答えた。
「君はもう婚約者がいるのか・・
僕は姉上がやってくれたけど」

クリスの驚きに、リードは少し迷っているように答えた。

「形だけ・・だが」
リードは自分で言った言葉をかみしめていた。
そう・・形だけの相手・・
父が決めた婚約者。いや、皇帝だろう。

婚約者とは名ばかりで、年に一度くらいしか会っていない。
自分も学生だし、
しかしこの先、卒業したらそうなるのだろう。

クリスは感心したように言った。
「やはり、紋章付き貴族は違うんだな・・
皇族に近い家系だからな」

大広間に生徒が、ぞろぞろ入室してきた。

リードは生徒たちを壁際の椅子に座らせ、説明を始めた。

「学校に入学する前に、君たちは
まずダンスの相手を、探さなくてはならない。
好きな女の子を誘う、いなければ姉妹、いとこ、知り合いとか準備が
必要だ」

生徒の間でクスクス笑う、戸惑い、下をむいてしまう者もいる。
「好きな女の子なら、最高だが・・難関だ!!」
クリスが大声で言った。

リードが続ける。
「それからワルツのステップは
しっかり覚える事。
女の子の足を踏んだら最低だ。
男性はリードしなくてはならないからね。
恥をかかないように、練習は真剣にやることだ」

「君たちは紳士として見られることを忘れるな!」
クリスが合いの手をいれる。

「まずは入場の所から、模範を見せよう」
リードがそう言い、
大広間の扉を大きく開けた。


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