魔法の恋の行方・魔女の媚薬(シリーズ3 グリセラとリーディアン)

<狩猟の館・大広間前・廊下・13時30分>

廊下の向こうから、
グリセラがバケツを持って歩いてきた。
「グリセラ、ちょうどいいところに来た。手伝ってくれないか?」

リードが声をかけた。
「ダンスの相手を頼みたい」

グリセラは、下を向いてもじもじ
している。
「入場のところだけでいいんだ。
広間の位置決めをしたいから」

「あの・・はい」
グリセラはバケツを床に置いて、
エプロンで手をぬぐった。

グリセラは仕方がないと言った風に、リードの隣にうつむいて立った。
「一応パーティの想定なのでね。
君は王女様のつもりになってくれ」
グリセラはその指示に、素直に従って前を向いた。
リードはその横顔を見た。
やはり美しい・・
白い薔薇

「・・それでは僕の手に、君の手を
のせてくれ。
エスコートするから・・」

なんだろう・・甘い香りがする・・うっとりするような・・
不思議な高揚感・・
グリセラの手が、リードの手に触れた瞬間だった。

カツーン・・
ステッキの先で、床を叩いた音がした。
「グリセラ!!
仕事にもどりなさいっ!!」
イ―ディス先生の声が響いた。

いつ・・いたのだろうか・・
気が付かなった。

グリセラはあわてて、バケツを持って走って行った。

「その・・
僕たちはダンスのレッスンで、
女の子がいないので、グリセラに
代役を頼んだだけです」

クリスが、イ―ディス先生に向かって言い訳をした。

「これは使用人の仕事ではない」
イ―ディス先生は、クリスを冷たい目で見た。
リードが、頭をさげた。
「申し訳ありません」

広間では、生徒がざわついている。

イ―ディス先生は、それに気がつくと
「ふん、ダンスレッスンか・・
仕方がないですね。
それでは、
私が代わりにやりましょう」


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