魔法の恋の行方・魔女の媚薬(シリーズ3 グリセラとリーディアン)

狩猟の館(初日)2-5ページ

<グスタフ皇国の平原・15時>

なだらかな丘の先に山並みが続く。

山を越えるとそこは魔女の国の領地になる。
平原には所々、尖った岩が墓標のように突き出てた。

荒れ野。
遠くには廃墟、古城が見える。

この場所は1年を通して風が強い。
魔女の国の山並みから、風が降りてくるのだ。

そして、低い石垣が続き、羊が放牧されている。
その中の一本道を、2頭の馬が駆け抜けていく

先に進むのがリーディアン・レジア。貴族の嫡男だ。

それを追いかけるのがクリスティ・フェンネル。
同じく貴族の嫡男であり、二人は友人である。

まるで死者がさまようような場所だな・・
リードはふと思った。
昼間ならまだいいが、夜は恐ろしいほど・・静かだ。

後ろから、クリスが疲れたような声で、リードに呼びかけた。

「少し休憩しようよ。
馬も疲れてきている」
リードは馬を止めて、振り向いた。
「そうだな・・もう少しだが」

クリスはさっそく馬から降りて、
草原に座り込んだ。

「まったく、なんで学校を卒業した僕たちに、こんな事を手伝わせるんだ?」
クリスは不満げに口を尖らした。

「サマースクールの先生の助手なんて、それもガキどものお守り役だぜ」

リードは笑いながら馬から降りて、軽く馬の首を叩いてねぎらった。

「しかたないよ。
先生たちにはお世話になったし。
それに教えることは、僕たちにも勉強になるしね」

「全く優等生の答えだな」
クリスは、リードをからかうように言った。

クリスは水筒の水を一口飲んで、リードを見た。
「まぁ、君は首席卒業、最優秀を取った実績があるからな。
それに君の家は紋章付き貴族だ。
将来、グスタフ皇国の中心人物になる・・と父上は言ってたぞ」

クリスはため息をついた。
「まったく、君と比べられるこっちの身にもなってほしいよ。
僕は出来の悪い息子だからな」

グスタフ皇国は、紋章を持った貴族が権力をもつ。
レジア家はその中でも、皇族とのつながりの強い古い騎士の家系である。

リードの父親は皇帝の腹心であり、国内外でも強い影響力を持つ人物だ。
その長男であるリードも当然ながら、その継承者と期待されていた。
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