魔法の恋の行方・魔女の媚薬（シリーズ３ グリセラとリーディアン）

＜狩猟の館・食堂・１９時３０分＞

イーディス先生が、食堂に入って来た時から、
明らかに雰囲気が違う。

何か酒に酔ったような・・
揺らぐような・・・

校長先生がリードを見た。
「あと、こちらの青年は
リーディアン・レジア、同じく助手を務めます。
彼は本校の首席卒業です」
リードは軽く頭を下げた。
「リーディアン・レジアです」

イーディス先生は興味深げに、
リードを見つめた。

その瞳は、ろうそくの炎と同調するように揺らぐ。
「ああ、とても優秀なのですね。
それにレジア家・・オオカミの紋章ですか・・・
勇敢で誇り高い騎士の家系。
君も強いのですか？」

「いえ、そんな事は・・」
リードはうつむいた。
イーディス先生の視線が、刺さるように感じた。

各自の紹介が終わり、食事が始まった。

イーディス先生は魅力的で、巧みな会話で人を惹きつける。
＜なぜか、イーディス先生に視線がいってしまう＞
リードはそう感じた。

食事が終わり、
クリスとリードは、自分の部屋に戻るために廊下を歩いていた。
リードが、自分の部屋に入ろうとした時、
クリスが、リードの上着を引っ張った。

「イーディス先生・・あの人・・
魔女の国の人かな？・・
どう思う？」
あの不思議な雰囲気、何かを呼び寄せるような・・・

「うん、不思議な人だ・・怖いくらい美しいというか・・」
「でも、あの人は男だから・・
魔女ではないよね」
クリスは確認するように言った。

「そうだね・・魔女とは違う・・」

そう答えると
リードは部屋に入った。

窓を開け離したままにしていたようだ。
風でカーテンが揺れている。
窓を閉めようとして、先の小高い丘が視界に入った。

その先に一瞬だが、稲妻が音もなく光った。
＜不思議な夜だ＞
なぜか、リードは胸騒ぎと、得体のしれない不安を感じた。