魔法の恋の行方・魔女の媚薬(シリーズ3 グリセラとリーディアン)
<狩猟の館・食堂・19時>


使用人に案内され,
正装したリードとクリスは、食堂の扉を開けた。

食卓に座っているのは、顔見知りの先生ばかりだ。
リードは少し安心した。
そして軽く会釈をして着席した。

校長の隣の席が空いている。
誰か、来るのだろうか。

「遅くなり、申し訳ありません」
食堂の扉が開かれた。

皆の視線が集まる、その先には
男が立っていた。

完成された美というのは、
彼を指しているのかもしれない。

彫刻のように優美ではあるが、
冷たさを感じる端正な顔立ち。

髪は長髪であるが、金に銀が混じる。

上等な仕立てのよい黒いコートが
その髪の美しさを際立たせている。
細身で、立ち姿が美しい。

唇が
男性にしては、紅く紅を引いたようで・・・妖艶だ。

リードは、脳裏に<魔女>という
単語が浮かんだ。

彼はコートを脱ぎ、後ろに控えていたメイドに渡した。

「私がイーディスです。
ドクター・イーディス、今後お見知りおきを・・
お招きいただき、ありがとうございます」

声の響きが、エフェクトがかかったように・・
空気が変わった。
イーディスは、校長の隣に着席した。

椅子の引く音で、校長が目覚めたように
「イーディス先生、今、始めるところでした。
皆さん、イーディス先生は、薬草学の研究をなさっています。
特に魔女の国の医療にも、精通されています。
薬草採集も兼ねてということで、
参加されます」

イーディスは美しい所作で、ワイングラスを掲げて、ほほ笑んだ。

出席者がうなずいたのを確認してから、イーディスは言った。

「ここは魔女の国に近いので、
薬草採集には最適な場所です。
あと、このメイドはグリセラです。
私の使用人ですが、
滞在中はここの仕事を手伝わせます。」

イーディスは、後ろに控えていた
黒い髪、黒い服の娘が、うつむきながら、頭を下げた。

女の子にしては珍しい、度の強い
眼鏡をかけている。

イーディスは校長に話しかけた。
「校長先生、お願いがあります。
グリセラにも仕事がない時は、
授業を聞くことを、お許しいただけませんか?」
校長はうなずいた。

「ええ、もちろん、生徒の邪魔にならなければ・・」
イーディスは、満足げに笑顔をみせた。
「こちらのお若い方は?」
イーディスの視線が、クリスにむけられた。

その瞳はろうそくの炎で、
深い群青と金が、混じりあうように輝く。
まるでラピスラズリの石のようだ。

リードは母親の宝石箱に入っていた指輪を思い出した。
「クリス、自己紹介を・・」
校長先生が促した。

イーディスは、クリスを見つめた。
「クリスティ・フェンネルです。
先生方の助手をやることになっています」
「フェンネル家は・・確か魔女の血ですね。君は・・美しい・・」
クリスは真っ赤になった。


< 5 / 35 >

この作品をシェア

pagetop