浮気 × 浮気


確かに、そう思われても仕方がない。弁解する余地もない。


俺は秋元さんの顔を見ることも出来ず、ただ「すむません」と俯きながらその一言しか発せなかった。


そんな俺をどんな顔で見ていたのかなんて分からない。けれど、秋本さんは静かに俺の胸ぐらから手を離すと、徐に口を開いた。


「……もう、明里とは会わないでくれ。それが明里のためだ」

「……」

「分かったなら、もう帰ってくれ。……君がいる場所なんかないんだよ。」


その言葉を残して、秋本さんは俺に颯爽と背を向けた。俺の言葉に耳を持たせようとはせずに。


俺は、秋本さんを追いかけなかった。
…………いや、追いかけられなかった。

秋本さんの言っていることは正論だ。俺が明里さんに会う資格はない。
その通りだ。

会いたいと思っているのは俺だけで、俺と会うことで明里さんはさらに傷つく。辛いことを思い出す。

頬を一筋の雫が伝った。


…………離れよう。


俺はその日、明里さんに会うとこなく病院を去った。

そして、翌日。
俺は会社を辞めた……____。


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《木嶋 暁side END》

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