浮気 × 浮気
唇と唇が離れ、陸のやさしい眼差しの中に囚われる。
きっとたくさん泣いたのだろう、…陸の目は赤く充血していた。
「ごめん、最後にキスだけ…したかったんだ。」
呟くように言われたその言葉は儚くて。
「……別れよう、明里」
陸は私に笑顔でそう言い放った。
涙で滲んで、真っ直ぐに陸を見ることが出来ない。
泣きたいのは俺の方だよ、と陸は切なげに私に笑いかける。
「……ごめ、なさい……っ」
陸に何も返すことが出来なかった。私を信じて私をずっと好きでいてくれた陸に。
「明里は、…………本当に好きな人と幸せになってくれ」
陸は私の頭をそっと優しく撫でたあと、一切振り返ることなく、病室を去っていった。
急に静寂を取り戻した病室は、やけに静かで……逆にその静けさが苦しかった。
「……ありがとう」
聞こえるはずのないその声は、シンとした病室に吸い込まれて消えていった。ーー。
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