離してよ、牙城くん。
「暴れんなってー」
くすくす笑ってわたしをなだめる牙城くん。
これじゃあ、まるで。
ダダをこねる子どもと、その親だ。
身長もぜんぜん違いすぎて顔が遠い。
いろいろ考えてじっと牙城くんの綺麗なお顔を眺めていたら、彼は「ん?」と首を傾げた。
「どーしたの、百々ちゃん」
少し身を屈ませて視線を合わせる牙城くん。
なんだか彼氏彼女じゃないのに近距離で、戸惑ってしまう。
「な、んでもない……っ」
プイっと顔を背けると、牙城くんはなぜか嬉しそうに笑った。
「百々ちゃんってカワイーよね、まじで」
きっとお世辞だし、牙城くんはこういうことは平気で言っちゃう人間だから、いちいち気にしていたくない。
でも、やっぱりなぜか嬉しくて恥ずかしくて。