離してよ、牙城くん。
いい意味でも、わるい意味でも。
牙城くんは、すごく目立ってしまう。
そんな彼がわざわざうちの高校に転校してきた理由。
──── それは、たぶん、わたしなんだと思う。
「百々ちゃーん」
「な、なに?」
「難しい顔してんね」
わたしの眉間のしわを伸ばすようにグリグリ押してきた牙城くん。
至近距離の彼のお顔はやはりとても綺麗で。
クイっと上がっている口角までもが色っぽい。
まっすぐな視線に耐えきれなくて、思わず目をそらした。
「なんにもないよ」
そっけなく言うも、牙城くんはまったく気にせず言う。
「ほんと?
まあ、百々ちゃんは、なんであれ俺のだからー」
「牙城くんのになった覚えはありません……!」
「えーおかしいなあ。
俺のなかではそうなってるんだけど」
「……」