離してよ、牙城くん。
よくわからない。
牙城くんはいつも飄々としていて、掴めないから。
暴走族、なんて物騒な言葉が、なぜかとっても似合ってしまう危険な匂いも。
わたしを構う理由も。
知らなさすぎて怖いと思うときが、ときどきある。
悶々と考えるもらちが明かなくて、その思考をすぐに頭から追い出した。
「そーだ」
なにかを思い出したような牙城くんは、わたしの頰をむにっとつねる。
まったく痛くないそれに首を傾げていると、牙城くんは言った。
「百々ちゃんさ、お約束三か条忘れてないよね?」
「……ま、まさか」
「ん。じゃあ、復習。
言ってみな」
「ええ……っ」
なんで、また。
このお約束三か条は、なるべく知らないふりをしたいものなのに……。
……なぜならば。
さっきも言ったように、牙城くん中心のお約束だから、あまり納得していないからだ。