離してよ、牙城くん。
「お約束ってなに……」
げっそりと花葉がそう呟いているのが耳に入り、あいまいに微笑んだ。
きっと言っても理解してくれないだろう。
何度も言うけれど、わたしも納得していないし。
花葉と牙城くんは犬猿の仲、っていう言葉がしっくりくる。
そっとしておくのがいちばんだろうし、いつかは仲良くしてほしいなって思ってるけどね。
「牙城渚〜〜、これからわたしの敵だ!天敵!」
「ええっ、牙城くん、いいひとなのになあ……」
「なっ?!百々が牙城渚の味方した!
あやつ……、洗脳までしてるのか?!」
「されてないよ……」
「ううう、許せぬ……」
ギリギリ歯ぎしりしている花葉をなだめて、教室に入ろうとする。
ちらりと横目でとなりの教室をのぞくと、さきに行った牙城くんはいなかった。
あー……、もう、またサボってるんだから!
「花葉、ごめん!
さきに教室入ってて……!」
「え、ぜんぜん大丈夫だけど、なんで?」
「牙城くん、探してくるね……!」