罪の音
心臓の音が相手側に聞こえそうなほど、私の心臓はドクドクと騒々しい音を出していた。「ええ、吉岡ですが。警察の方がなんの御用でしょうか」必死に動揺を抑えながら絞り出すように声をだした。「吉岡あゆみさんのことについてです。」あゆみがなにかしたのだろうか。あゆみは学校では大人しいほうで、今まで問題を起こしたことは1つもなかった。それどころか、とてもいい子だと近所でも言われるほどの子だった。混乱した頭を整理する時間もなく、私は玄関のドアを開けた。警察2人のうちベテランのような警察官1人が「最近おきている連続殺人の件なんですがね、現場付近の防犯カメラにお宅の娘さんが映っていたものだから、少しお話を伺いたいとおもってきたのですよ。」「そんな言い方したら勘違いなさりますよ、警部補。あ、あくまでなにか目撃していないかを娘さんにお聞きしたいだけなのです。」今度は下っ端の警察官と思われるもう1人の方が口を挟んだ。「娘のあゆみならまだ帰ってきていないんですよ。塾の方にいってるんです。」「そうでしたか、では別の日にまた来ます。」2人の警察は少し会釈をして足早に去っていった。その後ろ姿を見送ってから私は玄関のドアを閉めた。あゆみはなぜ現場付近の防犯カメラに映っていたのだろうか。あゆみの通っている塾や学校からの道とは少しはずれているはずなのだが。あゆみに疑いがかかっていなかったという安堵の気持ちとともに、疑問をいだきながらリビングに向かった。「誰だったの、てっきりあゆみだと思っていたけど。」と妻の美智子が夕飯の食器の洗い物をしながら私に質問した。「警察の方が来たよ。なんでもあゆみが連続殺人の現場の付近の防犯カメラに映っていたらしいんだ。それであゆみに話がしたいらしい」「どういうことよ、あゆみが疑われてるの。」美智子は皿洗いをしている手を止めてこちらをみた。「違うよ。あくまでなにか見てないか聞きたいらしい。あゆみのような子供が連続殺人なんていくらなんでも警察は考えてないだろう」「そうよね。」美智子は安心したように胸をなでおろした。「姉ちゃん、遅いね」
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