君がくれた花言葉
退院と疑問
翌日、優月に言われた通り、僕は優月が目を覚ます前に病室を出て、退院手続きをし、お母さんと家に帰った。

「内豊、退院おめでとう。今日は内豊の好きな物、沢山作るからね。楽しみに待ってなさーい?」

でたでた。大体が退院したら祝いとして豪華な食事。おめでとうの言葉。母親の涙。
別に嫌って訳では無いが、僕の入院理由は自殺未遂から始まったことであって、自分的には喜べるような退院の仕方ではない。
とりあえずここは無難にこう答えよう。

「ありがと、母さん。できるまで少し部屋で寝てくるよ。」

「わかったわー。ゆっくりしときなさいね。」

映画や小説でもほとんどの人がこう答える。意外とこの言葉は使えるもんだ。
優月に会いたい。明日にでもお見舞いに行こう。リィンカーネーションの花を買って。

「内豊〜!ご飯できたわよ〜。」

寝るつもりはなかったがいつの間にか寝ていたらしい。時刻は午後18時を指している。

「今行くよ。」

食卓へ足を向けるとお父さんも仕事から帰ってきてたみたいだ。

「おぉ。内豊、退院おめでとう。」

そう言ってお父さんは僕紙袋を差し出した。
中には本が2冊と色紙が入っていた。

「父さん、これ…。」

「あぁ。途中学校に退院したと知らせに行ったらなぁ、クラスのみんなでお金を出し合ったらしく、渡してくれって頼まれてな。」

まさか、あんな奴らがこんなことを僕にしてくれるわけが無い。どうせ担任に言われて仕方なくだ。お金だって担任が1人で出したに違いない。

「まぁ、クラスのみんなも内豊のことを大切に思ってくれてたみたいだ。みんな待ってるぞ。」

「そっか。ありがとう父さん。」

「でも無理に学校行かなくてもいいのよ?だってまだ退院したばかりだし。ずっと行かないのはダメだけど。」

「大丈夫だよ母さん。体調悪くなったらすぐ言うし。明日からでも学校行くよ。」

「そう?内豊が決めたことだから口出しはしないわ。」

「明日から頑張るんだぞ内豊。」

「うん。ありがとう。僕お腹空いちゃったよ。早く食べよう。」

「そうね。冷めないうちに。」

この日はせっかく母さんが豪華な食事を振舞ってくれたのに全く味がしなくて何を食べたかすらも正直覚えてない。
クラスのみんながこんなものを僕に提供してくれるわけが無い。
これが一番気がかりだ。ただ、これ以外にもうひとつ気がかりなのが、僕が自殺未遂をする前の両親じゃない。以前はこんなに仲良く会話なんかしていなかった。きっと僕に気を使ってるのだろう。かえって居心地が悪いのに気づいてくれよ。
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