神殺しのクロノスタシス3
「…令月君…」

「無駄だよ。君達が今話してること」

…何で、当たり前のように入ってきてんのかね、こいつは。

「…令月君。下校時刻は過ぎてるよ。学生寮に戻らなきゃ」

シルナは、優しくそう言ったが。

「うん、知ってる。抜け出してきた」

抜け出してくるな。

「大丈夫。ルームメイトには、ちゃんと伝えてあるから」

そういう問題じゃない。

「だって、僕の話してるんでしょう?」

「…」

「僕の話なのに、僕がいないところでするのはおかしい」

…やっぱり。

全部自分の責任だと思いやがって。

大人達に任せておけば良い、あとは全部何とかしてくれる、と放っておけば良いものを。

無駄に大人びてるから、それも出来ないのだ。

「令月君。君はもう、何も背負う必要はないんだよ」

シルナは、説得するという手段に出た。

宥める、と言った方が正しいか?

「こうなったのは、君の責任じゃない。あとのことは、大人達に任せておけば良いんだ。君は何もしなくて良い。だから…」

「無駄ですよ、学院長」

答えたのは、令月ではなく、ナジュだった。

「この人、いくら遠ざけても遠ざけても、自分から入ってくる気満々ですから。だったらもう、無理に遠ざけるより、渦中に置いて守った方が良い」

「…」

…そうか。

令月の心を読んで、令月の覚悟を知っての、その発言か。

「…私は本意ではないよ」

シルナは、そう言うけど。

俺も、そう思うけど。

「…君達は『アメノミコト』を知らない。知らない相手と戦おうとしてる。でも僕なら知ってる。全部知ってる訳じゃないけど、でも君達よりはずっと、遥かに、奴らのことを知ってる」

そりゃそうだろうよ。

お前はそこで育ち、ついこの間までそこにいたのだから。

「そして、君達と奴らのいさかいの発端は、他でもないこの僕だ。なら、僕が知らない振りをする訳にはいかない」

「…」

「僕に分かることだったら、全部話す。それが僕の…裏切り者の僕の…責任だから」

…あぁ、そうかい。

分かったよ。

そこまで覚悟してるんなら、もう口を挟むのはやめよう。

「…分かった。でも、一つだけ約束しろ」

「何を?」

「何があっても、絶対、自分一人だけで背負おうとするな。俺達を頼れ」

「…それ、破ったらどうなるの?」

…破ったら?

そうだな。

「イレース。どうする?」

「まず、下校時刻厳守を無視、校舎内に勝手に侵入、その上で教師の忠告を無視するとなっては、もう救いようがありませんね。退学処分です」

容赦ねぇ。

「…と、言いたいところですが。あなたの場合退学処分は罰にならないので、妥協して…二週間以内に全科目、10枚以上レポートを書いて提出してもらうとしましょう」

さすが、元ラミッドフルスの鬼教官。

妥協してそれか。

鬼のような課題だ。

「だってさ。分かったな?」

「…分かった」

宜しい。

なら、関わることを許そう。

シルナは、まだ不本意なようだったが。

本人の意思が、ここまで固いのだ。

だったらもう、遠ざけておくことは出来ない。
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