神殺しのクロノスタシス3
折角作った料理は、そりゃ通りすがりの生徒達が、美味しく食べてくれて。

僕の株も、料理の腕前も急上昇で、嬉しいけど。

しかし、肝心のすぐりさんが、何出してもNGNGで。

我儘ばっか言うしさ。

まぁ、子供だから、我儘言いたいなら言えば良いけどさ。

それに僕、別にすぐりさんがトマト食べられなくて、ツキナさんに悲しまれようが泣かれようが。

全ッ然、どうでも良いし。

これはすぐりさんの恋愛問題であって、僕の恋愛は順調だし。

別にナスやトマトくらい、食べられなくても死にはしないよ。

ナスとトマトで死ねるなら、僕だってこんなに人生苦労してないです。

それに、今回のトマトは、前回のナスより厄介だ。

だって、ナスのときと違って。

今回のトマトは、調理次第で味を誤魔化す、ってことが出来ない。

だって、まず最初にトマトは丸かじりしよう!ってツキナさんに言われてるんだろう?

なら、調味料を入れる余地がない。

精々、水洗いするくらいか?

水で洗って、何もつけずにそのままガブリ。

いくらすぐりさんが、熱狂的大根おろしファンだとしても。

さすがに、畑に大根おろし持っていく訳にはいかない。

つまり、今回の場合。

他の何かで誤魔化せないなら、もう、素直になるしかない。

素直に、トマト嫌いを告白するか。

素直に、トマトを克服するか。

このどちらか。

いずれにしても、素直になるしかないのだ。

どちらの素直を選ぶかは、すぐりさん次第。

…なのだが。

「ぐぅ…。仕方ない、こうなったら…」

…お?どっちか選んだか。

と、思ったら。

「収穫の日だけ、『八千代』に俺の変装をしてもらって…」

いかにも、暗殺者が考えそうな手段だよ。

頭悪いなぁ…。

潔ぎ悪過ぎて、びっくりする。

「…あなた、それで満足なんですか」

「…」

なんだかもう、作戦にこだわらなくなってきてるみたいだが。

「そりゃ、頼めばやってくれると思いますよ、変装。令月さんも」 

多分、あの人のことだから。

何で自分はこんなことしてるんだろう、でも『八千歳』がやってって言うから、やろう。みたいな。

そんな、相変わらずボケーッとした頭で、すぐりさんの影武者をやってくれるだろう。

で、一方のツキナさん。

あの子もあの子で、頭が少々残念だから。

令月さんが変装していることなんて、気づきもしないだろう。

しかし。

「『トマト美味しいね〜!』って言う、ツキナさんの最高の笑顔を、あなたは見れないんですよ。その笑顔を見る権利を、令月さんに譲って良いんですか?」

令月さんはきっと、ツキナさんのその笑顔に、何の感慨も浮かばないだろう。

ふーん、良かったね。と思うのが関の山。

あなた、それで満足なんですか?

僕だったら、絶対嫌だ。

リリスの笑顔は、僕だけで独占したい。他の人になんか、絶対渡したくない。

例え、脳みそを齧らされることになろうとも。
< 444 / 822 >

この作品をシェア

pagetop