神殺しのクロノスタシス3
しばらくすると。

「お待たせしました〜!」

さっきの店員さんが、お盆に山程お皿を乗せて、大量の肉を持ってきてくれた。

持ってきてくれたのは良いが、量が多過ぎて、焼くスペースに困るな。

「ここで捌くんじゃないんだ…」

「怪しいよね〜。本当は何の肉か分からないよ」

「うん。牛だって言ってたけど、もしかしたらワニかも」

元暗殺者組が、なんか焼肉屋に失礼なことを言ってるが。

心配しなくても、ちゃんと牛だよ。

何だワニって。

とりあえず適当に焼こう…と、トングを手に、網の上に肉を並べようとしたら。

「ちょっと羽久さん。雑多に置かないでください。そんなバラバラに置いたら取りにくいでしょう」

「えっ、あ」

イレースに怒られた。

挙げ句。

トングを引ったくられ、イレースが網の上の肉を並べ直していた。

全ての肉が、気をつけ!整列!みたいな美しい並びで焼かれていた。

…几帳面だなぁ…。

「鍋奉行ならぬ、焼肉奉行イレースさんだね…」

まるで測ったかのように、あまりに美しく並べられていく肉に、天音が一言。

本当。性格出るよなこういうの。

下手に口を出したら怒られそうだから、黙っとこうぜ。

…ん?

そういえば。

「俺達、見事に肉しか頼んでないな」

「ま、まぁ…そうだね…」

「?焼肉屋だったら、肉しかないんじゃないの?」

首を傾げる令月。

まぁ、基本はそうなんだけど。

「ほら、メニュー表見てみろ。他にも色々あるんだよ。ご飯とか野菜とか、魚介類も」

「魚介?オオサンショウウオとか、ヌートリアとか?」

お前の中の「魚介類」の定義、どうなってんだよ。

水の中にいたら、全部魚介類なのか?

すると。

「馬鹿だなー『八千代』。オオサンショウウオもヌートリアも美味しくないじゃん」

食べたことあるのか?

「そうだね。じゃあ他に魚介類って何だろう…」

「あれじゃない?ヤドカリとかザリガニとか」

甲殻類という点では惜しいが、でも違う。

やっぱり、こいつらの魚介類の定義、おかしいわ。

ここは、大人として正してやりたいところだが…。

「あ、今日はそういうのナシです。肉だけです」

「安いですからね、野菜や魚介は。あ、でも、この特選伊勢海老なら頼んで良いですよ」

当たり前のように言う、ナジュとイレース。

この二人は、シルナに何か恨みでもあるのだろうか。

ちなみにこの間、シルナは半泣きでバニラアイスを掬っていた。

ちょっと可哀想になってきた。

< 641 / 822 >

この作品をシェア

pagetop