Grand Duo * グラン・デュオ ―シューベルトは初恋花嫁を諦めない―

 きつく抱きしめられたまま、激しい口づけを繰り返されて、わたしの身体がアキフミに溶かされていく。上半身はだけた状態でソファに押し倒され、また、舌先で嬲るようなキス。
 アキフミのキスで腰が砕けてしまったわたしをいいことに、彼は自分が着ていたネクタイをしゅるりとほどいて肩より上へあげさせた手首へ結んでいく。両手を拘束され抵抗できなくなった身体は、さらにアキフミに蹂躙されて疼きを高めていく。

「あ、あっ……っだめ、なのに」
「ネメ。遺言書の内容次第では、お前を奪い取ってやる。こんな風に」
「いやっ、アキフミっ……!」

 開きっぱなしの窓からはしとしとと降り注ぐ雨に濡れた深緑の木々が見える。
 まるで外で犯されているかのような錯覚に陥って、身体がぞくりと震えだす。

 ――そのまま、彼にすべてを奪われて、わたしはその場で、失神した。
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