Grand Duo * グラン・デュオ ―シューベルトは初恋花嫁を諦めない―

シューベルトと初夏の愛人《3》




 夫の死からはじまった怒涛の二日間を経て、わたしの日常に紫葉礼文が入り込む――……


   * * *


 アキフミに、この軽井沢の土地と屋敷にある三台のピアノを守るために身体を明け渡した朝は、いつもよりも気怠くて、身体が重たかった。

 ――た、たしかに「愛人になってあげる」と言ったのはわ、わたしだけど。あんなに早急に寝室に連れて行かれて喪服を脱がされるなんて……これってふつうのことなの?

 黒い服には何者にも染まらないという意味があるのに、それを脱がされてしまっては元も子もない。わたしは一糸まとわぬ無防備な状態にされ、寝台の上に押し倒された。思い出すだけでも顔に火がつきそうなほどの、甘い言葉を囁かれながら。身体中をまさぐられ、わけがわからないうちに未開通だった女の部分を、強引に、けれども慎重にひらかれた。
 その、あまりの痛さに一瞬、意識を飛ばしたほど。
 アキフミは最初から最後まで必死な形相で、わたしの身体にふれていた。唇だけでなく、身体中にキスされた。真っ白な肌に赤い花が散るほどに、強く吸われて、痕が刻まれたものが、いまもしっかり残っている。

 ――なんだか春の終わりの嵐のような一夜だった。だけど、夢じゃないんだよね。
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