秘する君は、まことしやかに見紛いの恋を拒む。
恋人の遺骨の前で


東京へ到着したのは、午後の11時を回った深夜だった。

「四宮さん、立てますか?」

言われて、シートに座ったままぼうっとしてしまっていた事に気がつく。

張り詰めていた恐怖感と緊張感から解放され、安堵感と激しい疲労感で身体で重たくさせながらも席から立ち上がった。

(到着した・・・私、飛行機に乗れたんだ)

そう心の中で呟きながら、先を歩く秋世さんについて歩く。出会った瞬間は高人さんと見紛う程に酷似して見えたその背中は、当たり前だが全く高人さんとは違うものだと気がつく。

少しだけ猫背だった高人さんとは違ってまっすぐで、高人さんよりも少しだけ華奢なその背中に気になっていた事を問いかける。

「あの、どうして知っていたんですか?私が飛行機駄目だって事」
「まぁ、義弟のようなものですから」
「・・・答えになってません」


質問をかわされてしまった事を不服に思いながらも、ふと秋世さんが口にした単語に気が惹かれた。

(──・・・義弟・・・)

「そうか。でも、そうですよね、高人さんと結婚したら、秋世さんは私の義弟さんになるわけですもんね」

「・・・・・・。」
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