秘する君は、まことしやかに見紛いの恋を拒む。
──・・・
どの位そうしていたのだろう。
「飛翠ちゃん、着いたよ」
三波さんにそう声をかけられ、ハッとして顔を上げた。窓の外に立つ立派な日本様式の一軒家の前に目を見張る。
(ここ、確か都内の筈じゃ・・・)
驚きでポカンとしながら、秋世さんに続いて車を降りる。
「俺と兄さんの実家です。両親は外出しているので、あまり緊張しなくて大丈夫ですよ」
高人さんの実家。今まで足を踏み入れた事のなかった高人さんの実家に、高人さんではなく弟の秋世さんに連れられて来るとは思いもしなかった。
「あれ、やっぱり緊張されてます?」
そう言われて、きゅっときつく結んだ両手に大量の汗を握っている事に気がついた。むすんだ手を開いて胸の前にやると、その手が尋常じゃなく震えている事に動揺する。
「あ・・・私・・・」
──私、何の為にここに連れてこられたんだっけ。