秘する君は、まことしやかに見紛いの恋を拒む。
「ちゃんと食べないからですよ。大人なんですから、きちんと自己管理して下さい」
秋世さんがそう言うと同時に車を走らせる。
「・・・はい」
秋世さんの言葉に少し違和感を感じながら頷いた。
何だか少し調子が狂う。
───会社を継ぐ筈だった兄が亡くなって、俺も猫の手も借りたいくらい忙しいんですよ。そんな時にわざわざ、同情だけで四宮さんを自分の足で福岡まで迎えに行ったりしませんよ。
───俺は仕事の為なら何だってやる男です。俺の奥に兄の影を追っても無駄ですよ。
昨日はあんなに冷たい言葉を放っていたのに、急に、まるで私の身体の事を心配するかのような言葉を掛けられると戸惑う。
(もしかして私の事、懐柔しようとしてる?)
「それで私をわざわざ食事に連れ出してくれるんですか?高人さんが亡くなって、猫の手も借りたいくらいに忙しい秋世さんが?」
思わず皮肉めいた口調でそう尋ねる。
「四宮さんの健康管理も仕事の一環ですから」
「私が、大切な商売道具だからですか?」
「まあそうですね」
変に否定しない、秋世さんのサラリとした回答は何処か心地良かった。