マスク男の秘密
 彼との接触は図書委員が初めてではなかった。それは2年生になって1か月ほどが過ぎたある晴れた穏やかな放課後。

いつもの学校の帰り道、私はいつものように仲のいい友人たち何人かと一緒に帰っていたのだが、財布を教室の自分のロッカーに入れたままにしていたのを思い出して学校に引き返したのだった。電車通学の私の財布には、定期券が入っているのでこのままでは帰れない。

 学校に着くとグラウンドでは野球部が何かを叫びながら練習に励んでいた。体育館の方からもボールの弾む音が聞こえてくる。私は急いで教室へと向かった。ドアを開けると、誰もいないと思っていた教室に誰かがいた。


マスク男だ。


しかも寝ている。彼は自分の机で本を読んでいたらしく、開けたままの窓から吹き込む風で、パラパラとページがめくれた。教室には彼と私以外誰もいない。突如私はある衝動に駆られた。


―――――彼のマスクを剥いでやりたい――――――


 バクバクと私の心臓は激しく鳴り出す。私と彼の距離は大股で3歩ほど。少しずつ彼との距離を縮めていく。恐る恐る彼の机の前にしゃがみこみ、彼の顔をのぞきこんだ。

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