スノーホワイトは年下御曹司と恋に落ちない
啓五の瞳は黒目より白目の割合が大きく、相手に鋭い印象を与える『三白眼』だ。
珍しいと言っても、組織単位の中に一人か二人の割合ぐらいでは存在すると思う。陽芽子自身、今までにも数人だが見かけたことはある。けれどこんなにも整った顔とセットになっているパターンは初めてだ。
「あぁ、睨んでる訳じゃないんだけど……目付き悪くてごめん」
「え、なんで謝るの?」
ガシガシと後頭部を掻きながらばつが悪そうに視線を反らす啓五に、陽芽子の方が困惑してしまう。確かに彼の瞳には鋭い印象を感じるが、そこまで極端に珍しいものではないし、まして謝るようなことではない。
身体的特徴を口にするのは対人関係におけるマナー違反だと思うが、陽芽子は決して彼の特徴的な瞳を否定したいわけではない。むしろ逆だ。
「いいなーと思って」
「……え?」
「目が綺麗とか、眼力あってかっこいいとか、言われない?」
訊ねながら、再びその瞳を覗き込む。
アルコールが抜けた頭で冷静になれば余計にそう思う。髪の色は天然なのか敢えて染めているのかは分からないが、やや色素が薄くて柔和な印象がある。けれど瞳の色は黒曜石のように深い黒で、その鋭さはネコ科の大型動物のような貫禄さえ感じられた。
その目を、素直にかっこいいと思う。
人間らしい優しさと猛獣のような鋭さを兼ね備えた、綺麗な瞳だと思う。
「いや、言われたことないけど」
「そう?」
困惑したように苦笑する啓五に、もう一度頷く。
「でも啓五くんの目、きれいだしかっこいいよ」