となりの紀田くん



目の前には
紛れもなく私の
知っている瑠威がいて





あろうことか
井形さんとキスを
していて





そして井形さんの
服が乱れている………





「ゆあ…………」




酷く冷静な顔で
私を見据える瑠威に
少しばかり恐怖を覚える





「棗、行け」




彼が、そう告げると
井形さんは乱れた
服を直して
屋上を出て行った。





「何?俺に何かよう?」





瑠威の低くて冷たい声が
私の心に重くのし掛かる。






「い…………井形さんと………何をしてたの?」





震える声で
途切れ途切れに聞く。





「何って、見ての通りだけど?」





何一つ変わらない
無表情で私に近づき
壁に追い込むと
それが何?とでも
言いたげに
私を見下ろす





「どうして?井形さんは瑠威の知り合い?瑠威の何?」





「うるせぇな………関係ないやつが口出しすんなよ」






ドスの効いた低い声に
私の体がブルブルと
震え上がる





瑠威は私が好きだと言った
なのに井形さんとキスしてた。





どうしてーーーーーー??





どうしてこんなに
悲しいの?





どうしてこんなに
苦しいの?





どうしてこんなに
心が痛いの?





わからないよ。
自分がわからない。





幼馴染みなのに
なんで隠すの?




「関係なくないよ!幼馴染みでしょ?教えてよ…………私、頼りない?瑠威の相談くらい…………」





ダンッ!!!





私の言葉を遮るように
瑠威が壁を思いきり殴る





「幼馴染み…幼馴染みって………幼馴染みだったら何?幼馴染みだったら何でも話さなきゃいけないの?」





あ……………………





瑠威の言葉に
何も言えなくなる






「幼馴染みが何だって言うんだよ…………」





「でも…………」





「それとも何?俺が話したら、ゆあは俺のモノになってくれるの?違うでしょ?…………どんなに頑張ったって幼馴染みは幼馴染みなんだよ…………







俺は嫌だね。幼馴染みなんていう枠組みだけに挟まれて、いつまでたっても、ゆあの恋愛対象に入れないなんて。」






なんて悲しそうな顔を
しているの……………





そんな顔しないでよ。





「俺の期待に答える事が出来ないなら幼馴染みやめよう。これ以上、ゆあの傍にいるのは俺が無理。苦しくてどうにかなりそう…………







だから俺の過去にも触れないで…………自分が惨めになる。早く記憶戻して紀田のモノになっちまえよ」






酷く悲しげな顔で
力なさげに言葉を残して
彼は屋上を去って行った。
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