東京血風録4 ダークサイド・イリュージョン
無敵丸家の事。
今や、2人だけとなった国家機密秘匿蔵書の監視役の一族である。
“書院”管轄のそれらを監視、守備しているのだ。西日本支部が無敵丸宗家であり歴史を重んじ、礼節を徹していた。
礼に始まり、礼に終わる。
武の精神にも達観しており、職を全うしてきた。
代も変わり、考え方も相違した。
北日本を統べる無敵丸分家では、新しい取組みが成された。
それに意を反した本家は、弾劾した。
しかし、それにも我関せずの姿勢の分家に愛想を尽かし、決別したのだった。
目的は同じとして、それぞれの当主である、無敵丸剛太と無敵丸甲児が意気投合することはなかった。

有事による緊急出動要請、即ちキラーズ・コードが発動することもここ数年は無かったのだが“書院”の決定により、サブ的な要素ではあるが補填要員が設備された。
2人だけの無敵丸家の、補填というわけである。
手練れの者を厳選しているという事は知っていた。
カミラもその1人なのだろうが、会うのは初めてであった。そもそも有事が無いので、それもそのはずである。
宗家である剛太は“書院”が勝手に決めたその事に不服を持っていた。
我々だけで事足りるものを、何故?
実力がどんなものなのか、品定めするつもりで状況を正視した。

黒ずくめの者は、背筋を伸ばした。
気をこめる。そんな表現で威儀を正すと体がひと回り大きくなったようである。
筋骨隆々、フードを少し上げると精悍な眼差しであった。男である。
身長は170センチ中程、視線をカミラに向けるとそちらへ歩いていった。









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