東京血風録4 ダークサイド・イリュージョン
『カミラ・シルバーストーンVS謎の男』
「わかる!私にはわかる!あなた読んだね!」
カミラが大声で捲し立てる。
歩を進めるので、男との距離が縮まる。
カミラは、折り曲げた左腕を顔の高さまで上げてアップライトに構えた。
カミラはマーシャルアーツの有段者である。
当て勘には自信があって、その精度には絶対の信頼があった。
自分の制空権には入ればハイキックを、
そう決めていた。
距離が縮まる。男は構えない。
3・2・1
射程距離内!
左のフェイントを挟んで、カミラは右ハイキックを蹴った。確実に顎を捉える筈の爪先は、当たる前にスピードを落としていた。そして地面に戻った。
男が顔の前に手を出していた。
その手には、紙切れが揺れていた。
ひらりひらりとそれを揺らしながら、男が言った。
「俺はコレを見てるんだ。覚悟して蹴って来い。本気でだ。本気で」
それは、カミラでさえ見た事の無い秘匿蔵書の1ページ、だと思われた。
見てみたい、その気持ちと相反して、見てはいけないモノを目の当たりにしているようで、ドキドキした。
カミラは米国出身である。もともと親日家だった彼女は、日本に来て5年が経つ。相手の話を理解する事、日本語で自分の意思を伝え話す事は出来たが、読み書きは苦手だった。特に漢字が。
この職には、先のマーシャルアーツのスキルを認められ、採用されたのだ。
しかしながら、有事も無かったし現存するであろう秘匿蔵書を見た事も触った事も無かったのだ。
眼前にあるそれに、興味が無い訳じゃなかった。
その魔性。
格闘技に携わっている者ならば、是が非でも見てみたいモノであった。
そのページを読む、それだけで技量が格段にアップする。
禁断の書物。
その名は“魔王展(まおうてん)”。
その1枚が、カミラの前にあった。
「わかる!私にはわかる!あなた読んだね!」
カミラが大声で捲し立てる。
歩を進めるので、男との距離が縮まる。
カミラは、折り曲げた左腕を顔の高さまで上げてアップライトに構えた。
カミラはマーシャルアーツの有段者である。
当て勘には自信があって、その精度には絶対の信頼があった。
自分の制空権には入ればハイキックを、
そう決めていた。
距離が縮まる。男は構えない。
3・2・1
射程距離内!
左のフェイントを挟んで、カミラは右ハイキックを蹴った。確実に顎を捉える筈の爪先は、当たる前にスピードを落としていた。そして地面に戻った。
男が顔の前に手を出していた。
その手には、紙切れが揺れていた。
ひらりひらりとそれを揺らしながら、男が言った。
「俺はコレを見てるんだ。覚悟して蹴って来い。本気でだ。本気で」
それは、カミラでさえ見た事の無い秘匿蔵書の1ページ、だと思われた。
見てみたい、その気持ちと相反して、見てはいけないモノを目の当たりにしているようで、ドキドキした。
カミラは米国出身である。もともと親日家だった彼女は、日本に来て5年が経つ。相手の話を理解する事、日本語で自分の意思を伝え話す事は出来たが、読み書きは苦手だった。特に漢字が。
この職には、先のマーシャルアーツのスキルを認められ、採用されたのだ。
しかしながら、有事も無かったし現存するであろう秘匿蔵書を見た事も触った事も無かったのだ。
眼前にあるそれに、興味が無い訳じゃなかった。
その魔性。
格闘技に携わっている者ならば、是が非でも見てみたいモノであった。
そのページを読む、それだけで技量が格段にアップする。
禁断の書物。
その名は“魔王展(まおうてん)”。
その1枚が、カミラの前にあった。