東京血風録4 ダークサイド・イリュージョン
カミラは読んでみたいという衝動に駆られながら、斃してから読めばいいと改めた。
それにしても魔王展を読んだ者が、どれほどの力を発現するのか見当もつかない。距離を空けた。
カミラにはマーシャルアーツの他に、日本に来てから会得した技があった。
サンダーボルト。
体内に存在する微々たる電流を集め、末端部位の手や足に溜める。
マーシャルアーツの突きや蹴りが当たる瞬間に放電する。
打撃の衝撃に放電の痛みが加算される。
彼女だけのオリジナル技である。
練習時、危険と判断され1度しか使った事が無かった。
初めて人体に当てる。
果たして魔王展の者に通用するのか。
そんな中、掌に帯電する。
自分で色々試した結界、1番衝撃があると思われたのが、両方の掌から同時に当たる方法である。
和名、雷撃掌。
掌を当てる為、距離を詰める必要があった。キックでフェイントを入れる。距離を詰めて腹に叩き込む。

黒ずくめの男はフードを外した。ご丁寧に黒のニット帽を被っており、髪も見えなかった。これで人の形をした、黒い影が出現した。

カミラが距離を詰める。左のローから右ハイ。フェイント。男がスウェイしたところで屈むようにダッシュした。
喰らえ。
両の掌を並べて突き出した。放電。
腹があった空間には何も無く、放電も止めた。
男の姿は掌の更に下にあった。マトリックスポジション。あらぬ角度で体が屈折していて躱していた。更にその態勢のままカミラの顔めがけて蹴り上げてきた。
カミラはそれを肘でブロックした。
バランスを崩している男の体を蹴り潰す。雷撃を加える事も忘れずに。
蹴り潰した足裏に違和感。男の足裏がぴったりと張り付いていた。
ゴムか!放電出来ず。
蹴られた勢いの惰性でくるりと回り、男が立った。
逃がすか!
カミラの右ストレート!雷撃。
男は左腕で受けた。バチン!!火花と共に後ろへのけぞった。
効いた!
カミラは距離を詰めて、再度雷撃掌を狙った。腹へ。
当たる瞬間、カミラの掌の前にあったのは男の掌だった。
⁉︎
バチン!
激しい炸裂音が響き、両者が吹っ飛んだ。
雷撃掌⁉︎カミラが驚愕した。
自分の技を自ら味わった。掌が痺れていた。
「覚えたゾ!」
何?男の声にハッとして見ると、男の姿は眼前まで来ていた。その姿は雷撃掌を撃つ形だった。
⁉︎
カミラの腹に当たった掌は、右手一本だった。左手は右腕に添えられていた。
直列式⁉︎
ドゴン!
カミラの腹で衝撃が爆裂した。
激しく吹っ飛んで校舎の壁に激突した。
呻き声と共に、地面に落ちて動かなくなった。

男はスッと立ち上がると、気配を感じ振り向くと、そこには壁があった。
壁だと思ったものは、無敵丸剛太の胸板であった。










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