東京血風録4 ダークサイド・イリュージョン

東京ストレンジャーズ・3

王道遥が到着していた。
「何がどうなってる?」
遥が独り言ちた。
黒ずくめの男は、ただ立っていた。
カミラは傍らで、苦痛の表情を浮かべている。
剛太は四つん這いになりながら、状況説明に入った。
「例の盗まれた書物が読まれました。私も初めてですが、想像以上のものだす。
ここまで圧倒されるとは思っていませんでした」
遥は、男を一瞥する。
「誰?」
男は答えない。
剛太が続ける。
「その女性は私達の仲間です。助けに来てくれたのですが、2人がかりでも手に負えませんでした。お恥ずかしい」
自嘲した具合だが、全く笑っていなかった。
「そこまで凄いんだ」
遥は苛立ちを込めて呟いた。
「僕がやるよ」
遥が木刀を構えた。

『王道遥VS謎の男』

何故こうなる。
儂は伊號丸じゃ。
ここは首を突っ込む所じゃないだろうが、霧華がいない状況にイライラしとるんじゃろう。
【伊號丸、上昇鬼龍】
【お、お、おう】
不意打ちじゃった。心の中の会話じゃ。
遥は右上段に構えた。
遥奥義と名付けられたオリジナル技の一つで、初期のものになる。
二段式の袈裟斬りで、そこに伊號丸の協力を得て霊気の渦を作り出す。
一撃必殺の技である。
基本、無防備の人間に打ち込むような事は無かったのだが、今日の遥は違った。
遥の打ち込みを、男は冷静に躱して距離を取った。だが帽子が振り払われて地面に落ちた。
短髪が顕になったが、見覚えはなかった。
男は構えて、距離を詰めてきた。遥は正眼に構える。木刀を前にして素手で闘おうというのか。
見ると男の姿が、フッと消えた。
地面を滑るようにスライディングしてきた、疾い!
遥は飛んで避けた。
それが男の狙いだった。起きがけに左手を着きながら、右脚を突き上げてきた。
中空の遥はそれを木刀で払っていた。
回転してバランスを崩した所へ、立ち上がった男は組みついてきた。
その間に無敵丸剛太が割って入った。
必殺の前蹴りである。
クリーンヒットのフィンは、男の土手っ腹を貫き、男は吹っ飛んでいた。
男は中腰で踏ん張るが、そのまま3メートルも後ずさった。
「やっと1発入れられました」
「ありがとうございます」
剛太と遥が並び立つ。

その頃、伽藍学園へ向かう坂道の入り口道路が合わさった広がった場所で2人の男が言い争っていた。








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