東京血風録4 ダークサイド・イリュージョン
その型は、プロレスの醍醐味であるジャーマンスープレックスホールド、通称ジャーマンの型。
厳密に言えばジャーマンの亜流、両腕を抱え込み受け身すら取れなくするダルマ式ジャーマンである。
がっちりホールドし直すと、斜骸丸の体を持ち上げた。
この体格差なら余裕で為せる技である。
相手を持ち上げた勢い、反動でそのまま後ろに反り返りブリッジする。相手の後頭部はマットに強かに打ちつけられる。
甲児の場合、足の浮いた状態で一度止まるスタイルである。
そこから綺麗に弧を描いてブリッジした。アスファルトの上に。
プロレスならここで、そのままフォールしてスリーカウントが入り、試合が終了する。
しかし、ストリートファイトにおいてルールはあって無い様なものである。
ただ、並の人間なら後頭部からアスファルトに叩きつけられた時点で、ほぼ死亡である。良くて脳震盪か脳内出血、ほぼ廃人。真似してはいけない。

甲児は、クラッチを離さなかった。実際プロレスの試合でもあるのだが、2段式3段式と連続で出す場合があるのだ。
ジャーマンには、投げ放しと言ってクラッチを外して身体ごと投げ捨てる場合もあるのだが、甲児はキチンとブリッジで投げ切り、ちゃんと立ち上がった。
2発目のダルマ式ジャーマン!
先程と違い、勢いとスピードを乗せた見事な一撃であった。
死亡確定。
綺麗なブリッジを決めた時、それは起こった。

甲児の握力により、落としたと思われた刀はまだ斜骸丸の右手にあった。
柄(つか)だけ。
骨の集合体のような刀身は、バラバラになって宙に舞っていた。
それらが、雨の様に降り注いだ。
甲児のブリッジした腹に。
さくさく、さくさく、さくさく、さくさく
数10本の骨が、腹の筋肉に突き刺さり剣山のようになった。
うぐぅ〜⁉︎
堪らずブリッジが崩れた。

甲児は腹を見る。骨が刺さった様は不気味だったが、鍛え上げられた筋肉の表面に刺さったのみである。
腕で振り払うと、血が滲んで白いシャツが真っ赤に染まった。

斜骸丸は立っていた。
後頭部を押さえながら。

不死身か⁉︎
飛鳥は途轍もないモノを見せられていた。








< 22 / 57 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop