東京血風録4 ダークサイド・イリュージョン

東京ストレンジャーズ・7

「げ!俺血が苦手なんだわ」
甲児はそう言うと、腹を押さえながら坂道の端に設置されているガードレールにもたれ掛かった。

斜骸丸は、左手に付いた後頭部から流れる血を目にして首を傾げていた。
「痛い」
瞼に涙を浮かべ「痛い」と再度。

飛鳥が思わず、大丈夫か?と訊いた。
途端!
「大丈夫じゃない!!!!!」
斜骸丸が、柄だけの刀を振るった。

『斜骸丸VS藤堂飛鳥』

形のない剣。
飛鳥には、腕を振った様にしか見えなかった。
しかし、実体のない刀はその刀身が振われた如く、その軌道上に存在した。
即ち、弓型の骨は振られた勢いで飛んで来た。3本が。
飛鳥は冷静にそれらを叩き落とした。

急に自分を投げようとしてきた大男と、骨の剣を使う謎の剣士。
その闘いの様相を見ていた。
異次元の世界であった。
鬼、摂津秋房と戦った飛鳥でさえ、この有り様は異様であった。
然も、アスファルトに後頭部から投げ出されて立ち上がるなんて、正気の沙汰ではなかった。
そして、その矛先が自分に向いている。
病み上がりの体に、冷や汗が溢れた。

斜骸丸は、甲児が払った骨の落ちている辺りにいた。ダラリと右腕を垂らしている。こちらに振り向きざま、右腕を大きく振った。弧を描くように大きく。

飛鳥は見た。
腕の振られた軌道上、地面に落ちていた骨共は感覚を開けながらも、あたかも磁石で引っ張られるかの様に、大きな弧を描いて形づいた。
隙間は空いているが、巨大な刀である。
横へもう一振りすると、その刀は最初からその様な刀身だったかの様に、形づけられた。
更にもう一振り!
巨大な刀身の切っ先が、飛鳥に届いた。
!!!!!!
間一髪、頭を下げて躱す。
刀身が大きい分、連撃には時間差が生じる。飛鳥はダッシュした。
刀が戻る前に到達する。
!!!!!!!!
ダッシュしている力を込めた太腿に、鋭い痛みが!
何⁉︎
飛鳥の太腿に骨が刺さっていた。
止めない!
見ると、大剣と別の軌道で骨が飛んで来ていた。低い軌道のそれをパンチで迎撃して前へ出た。
距離3メートル。
右の拳を構えた。
!!!!!!!!!
ありえない……。
飛鳥の目の前すれすれを、大剣が凪いでいた。カーテンを引くように。
止まれなかった。慣性は無情である。
左脚で踏み込んで、右のパンチである。
飛鳥の反発式の一撃。
斜骸丸の眼前で失速して、当たる事はなかった。

飛鳥の左脚が太腿から寸断されていた。







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