東京血風録4 ダークサイド・イリュージョン
なんてことだ。
脚が。
倒れた飛鳥の前に、斜骸丸が立っていた。見下ろす瞳には、何の感情も読み取れなかった。
右手の刀、斜骸丸の本体である刀身・斜骸丸は刀の形を取り戻していた。
飛鳥は、全力で止血に取り掛かっていた。両手で太腿を押さえて、チャクラを全開にする。
呼吸が乱れそうになるのを、必死に堪えて整える。整える。整える。
乱れる。
ガチガチ歯が鳴る。
急激な寒さが、死を連想させる。

「待て待て待て、待て!」
斜骸丸の足下、何処から現れたのか人影があった。
斜骸丸と飛鳥の間に割って入った影は、ゆっくりとした動きであったが、パンチを出していた。
斜骸丸の腹に当たる瞬間、爆ぜた!
爆撃でくの字に折れた身体は、5〜6メートル吹っ飛んだ。

ガードレールで休んでいた、無敵丸甲児の傍まだ飛んで止まった。腹からぶすぶす煙が上がっている。
「遅ぇよ…。はじめまして、だけど」
甲児は独り言ちた。

「助けに来ました。マイク・ゴールドスミスです」
流暢な日本語で自己紹介した。

甲児は考える。書院が勝手に決めた事だが、不服だった。
禁断の書、秘匿書物を代々守ってきたのは我々無敵丸家なのだ。
もう2人しかおらず、宗家と分家は仲違いしているが、その根本に流れる葉脈は一体なのだ。
それを、何の相談も無く援軍を要請したと言ってきた。それも外国人だと言う。世も末だと思った。
有事も起きず、ただ平々凡々と漠然と生きてきた訳ではない。
たゆまぬ努力の末に、平穏は守られていたのだ。その自負はある。
それをこんな…。

すごい威力だな。










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