東京血風録4 ダークサイド・イリュージョン

東京ストレンジャーズ・8

マイク・ゴールドスミス。
彼もまた、日本でスカウトされた。
能力は爆砕打。
インパクトの瞬間、気の集合体を暴発させる。理屈の分からない独特な技。
元々、アメコミが好きで日本のアニメが好きになり、追って日本まで来た生粋のオタクである。
好きが高じて、特殊な打撃まで習得した変異体である。
「僕が来てよかったな」
マイクはそう言うと、飛鳥の斬られた太腿の横に跪く。
「痛いだろうに。爆砕点穴」
マイクが両手をかざした傷口で、小さな爆発が起こった。肉の灼ける匂い。
うぐっ!!
飛鳥は堪らず、呻いた。
爆砕打を応用した、術式である。
それを3度繰り返したところで、傷口が塞がっていた。
荒療治ではあるが、大動脈の流れる太腿を止血するのに適した手口だった。
小さな爆発だが、傷口を灼き固めて瞬時に止血させていた。
飛鳥は痛みに、意識が飛びそうになったが、なんとか堪えていた。
「火傷は自分で和らげて」
マイクは立ち上がった。
その先には、斜骸丸が立っていた。
「お前は、何だ?」

『斜骸丸VSマイク・ゴールドスミス』
まさかこんな事になるとは思わなかった。
禁断の書の紛失と”むてきまる”と言う男の存在だけ聞かされて此処まで来た。
甲児の巨躯を見て、すぐ彼だと判った。ただ、コイツは何なのだ?
禁断の書は人の能力を格段に上げると聞いていた。好機があれば、一読してやろうとまで思っていた。
剣士らしいが、どうも趣きがヘンだ。
違和感と興味とで、感情が複雑だった。
変な高揚感すらある。

マイクの基盤は、キックボクシングである。アップライトの構えだ。
そこへ爆砕打を加味する。

斜骸丸は、爆砕打を喰らい破れた服から覗く腹筋を撫でて、面白いと言った。
見事なシックスパックに割れた腹筋には擦り傷はあったが、大きな裂傷などは無かった。
右手に本体、斜骸丸を握ると突き出した型で構えた。








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