東京血風録4 ダークサイド・イリュージョン
フェイ・ドラン本体は、伽藍学園そばの民家に潜んでいた。
感覚で雲のような物体、アストラルワンを操作している。アストラルワンの顔に当たる部分から前方に、邪悪な存在を感じていた。
今までに遭遇したことのないような、凶暴さである。荒れ狂う嵐のような。

フェイの潜在下で、アストラルワンの大きさを変える事が出来た。
それは反比例して、小さければスピードは上がるがパワーが弱まり、パワーを上げればスピードが遅くなるデメリットを抱えていた。
初見の相手には、必ず平均なスタイルを使用する。大きさは小柄な女性ほどである。
それが斜骸丸の前に浮かんでいた。
小さく伸びた腕がファイティンポーズをとっている。

斜骸丸の右手には、骨が集まった不気味な剣を携えていた。
マイクの左腕だったモノは、すっかり剣の形を為していた。
フェイの攻撃は右ストレートであった。
右腕が膨らみを見せた刹那、それは斜骸丸の顔面に伸びた。距離的に届きそうもない一撃だったが、そこは幽体特有とも言うべく加速して伸びた。
避けようともしない斜骸丸の顔を捉えていた。
雲が当たったようにしか見えないのに、斜骸丸の顔は後ろに大きくのけぞった。
顔を戻した斜骸丸の口角が上がっていた。笑っているのだ。
顔右半分を失った悪鬼の顔である。
その顔めがけて、アストラルワンの左右のラッシュが襲いかかった。
斜骸丸が叫ぶ!
「自らが隠れておいて、こんなちゃちな
攻撃効くと思うなーッ!」
顔をめがけたラッシュは、斜骸丸の左腕のガードでことごとく弾かれていた。
フェイの自信は、アストラルワンが相手の攻撃を無効化する事にあった。
それが。
斜骸丸が下から振り上げた刀身は、アストラルワンの腹から胸にかけて引き裂いていった。

民家横、潜んでいたフェイ・ドランの腹から胸に裂傷が走った。血が噴き出す。
「ぐぅッ!何⁉︎」
フェイが叫んでいた。

「霊体如きが、剣鬼を相手に出来ると思うなよ」
斜骸丸は唸ったのだった。













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