東京血風録4 ダークサイド・イリュージョン
同刻、学園の外塀に人影があった。
その塀のある位置は、伽藍学園へ続く坂道の登り口のちょうど上部にあった。
ぼろぼろの白装束が外塀の上に指を掛けるところであった。
斜骸丸が崖を登って来たのだった。

剛太が地面に転がっている黒ずくめの男を指さした。
「そいつが“読者”だ。気をつけろ」
そうか、返事をしながら甲児は近づいていった。
その時、コメツキバッタの様に背中の反動だけで黒ずくめが飛び上がった。
着地しようとして伸ばした足は地面に着く事は無かった。
空中で首を甲児に掴まれ、宙ぶらりんになった。両手で甲児の腕に掴みかかるが微動だにしなかった。

剣鬼・伊號丸である。
奇妙な気を感じていた。懐かしいようなちょっと前に感じたような…。
否!!
嫌悪感!
【こ、この感じは!⁉︎】
伊號丸の気の方向に同調するように、遥も視線を向けた。
校庭のはずれ、400メートルトラックの反対側に人影があった。
白装束に、白の隈取り。異様な男だった。
【斜骸〜〜ッ⁉︎】
伊號丸心の叫び。
遥は思った。先の御業の結界にて伊號丸以外の剣鬼・貫丸(つらぬきまる)に遭った。剣鬼同士だと、名前の後の”丸”は呼ばないらしい。
あいつは、斜骸丸と言うのか。
だとすると、貫丸と同じく人の身体を占有した具現体ということだ。
木刀から伝わる伊號丸の畏怖の念を感じて、遥自身肌がチリチリした。
そして伊號丸がこう伝えた。
【奴は危険じゃ。最凶最大にヤバい奴がやって来た】
と。


校門に、足音ひとつ。
パタリ。
パタリ。









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