東京血風録4 ダークサイド・イリュージョン
王道遥である。
姉の行方はわからなかった。
それに、ヘトヘトだった。
姉のいないマンションで、ベッドに横になりたかったが剣鬼・伊號丸にどうしても訊いておきたい事があった。

儂は伊號丸じゃ。遥が話があると言うた時、胸騒ぎがあった。木刀を介すると意思が筒抜けになる。これは儂の独り言じゃ。
遥は漆黒の木刀を抱えると、そのままソファへ倒れ込んだ。
そして【ねぇ、伊號丸】と心の中で囁いた。
【僕の勘違いならそれまでなんだけど、僕と伊號丸………何て言うのかな、伝えにくいね、コレ。何だろう…。たぶん、あの時……伊號丸の本体?木刀が折られた時、僕の身体の中で復元した、よね?
あの時なんだけど、何ていうのかな、血が混じるというか行き来したと言うか。
僕と伊號丸が繋がった?かな?
そう感じるのは気のせい?】
【…………………。】

【気付いておったか。その通りなのじゃ。あの技法は秘術中の秘術、使いたくはなかったのじゃ。やむを得なかった。まさか儂が折られる様な事態になるとは。木刀が折られたとて、儂は消滅するわけではない。また新しい刀身を探せばよかっただけなのじゃ。ただ、儂は遥殿と別れたくなかった。それ故に、禁じの秘術を使用した。血を使い、より強い繋がりにより刀身を直す。木刀である儂だから出来る術法であった。より近く、より強く繋がる。意思の疎通でさえも】

伊號丸の無言に。
【この前、御業の結界で貫丸(つらぬきまる)に会ったじゃない。あの時、確信
したんだ。あの貫丸の具現化した姿、あれが剣鬼の能力なら、人間の意識を奪っている、よね。だとすると、何らかの形で本体である人間とすり替わっているんだろうな、と。
血が混じる事でそれが実現する。
違うかい?】
遥の意思は、落ち着いていた。
静かに自分に言い聞かせるように話している。
【遥殿。その通りじゃ。本当はしたくなかったのじゃ。儂は儂じゃ。新しい刀の儂は儂ではない。遥殿にまた遭える保証もない!それが嫌だったのじゃ!すまん】
【………。僕はそれが嫌だったんじゃないよ。力の奔流がダイレクトだったんで嬉しかったんだ。理由が知れてよかったよ】








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