√セッテン
「毎日毎日暗いホールを歩き回って、天窓から差込む淡い光で日を数えて、壁に日を書き綴った。
空腹と絶望で、もう正常な精神を保っていることができなくなった」

√の女の呟きが、耳に焼き付く。

あの壁の 乱れた血文字はやはり

蔵持七海のもの

1日1日数えるたびに、死の式が構築されていく。

絶望が、悲しみが、愛憎が、織り込められていく。

助けを呼ぶためのものに

死が滲んで溶けていく。

「15日後、私の感情も崩壊した。"わたし"は首を吊って死んだの。もう、楽になりたい、苦しみたくないって思ったから」

√の女は、言ってあは、と短く笑った。

「でも、それで終わらせておけばよかったのよ、禍々しいこの感情も、腐っていく体と一緒に、時間さえ経てば消えて薄れてしまったのに」

「苦痛の思いを込めた、ケータイも……一緒に?」

「そう。どんなに呪いをこめても、あそこの地下にあるだけなら、何の害もなかったのに」

山岡の顔をした√の女が笑った。

「美保が来たのよ。それで私は、死の待ち受けは、解き放たれた」

解き放たれた時、不思議な感覚だった、と酔ったように√の女は続けた。

「池谷美保が……アムリタに」

「アムリタ? 私が死んだあそこの名前? そう、アムリタって言うのね。
美保はね、私が死んだ翌日に迎えにきたの。皮肉よね。なんであと1日……あと1日早く来てくれなかったのか」

√の女はゆっくりと手を重ねて続けた。

「私が死んでて、驚いたんでしょうね。まさか死ぬとは思ってなかった……そんなところだと思うけど」
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