√セッテン
病院の裏口から病棟に入る。

半分くらい溶けたクレープを隠しながら病室へ駆け込んだ。

ノックして敦子が飛び込むと、山岡は本を読む手を止めて、嬉しそうに笑った。

「千恵、それで検査結果とかはどうなの?」

「うん、昨日の今日だから、まだ詳しいことは分かってないんだけど、明日には……」

「痛い検査?なんか、ゼリーみたいの飲んだりとかするの?」

2人が検査内容で盛り上がっているのをよそに

俺は椅子を敦子に出して、自分もベッドの横に腰掛けてカバンの中から返却されたテストを出す。

「山岡、これ今日返却されたテスト」

封筒を差し出すと、検査内容の説明をしていた山岡があ、とこちらに視線を返した。

封筒を受け取ると、封を開けて中身を広げる。

「わー、嫌なもん出さないでよー」

敦子は全身で拒絶すると、椅子に座って、俺と山岡を見つめた。

「んーでも千恵の点数とか興味あるなっ オール100とかだったら私噛むよ」

膝の上に回答用紙が置かれる。

一番上の数学は88点とマーキングされていた。

敦子は100点の回答用紙を羨ましそうに見ながら、千恵は字が綺麗だねぇーと呟いた。

「ねぇ、潤……ここ……部分点になってるんだけど何がいけなかったのかな」

敦子がひきつりながら点数を見つめていた。

まるでトランプをするように、回答用紙をスライドさせる。

頭の中で電卓を叩いて、山岡の平均点を出した。

『91.2点か』

ちょうど山岡と声が重なる。

山岡はじっと回答用紙を見つめて、1枚1枚めくってチェックをはじめる。

回答用紙を見る山岡の目は、知的で、澄んだ黒い瞳をしていた。
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