好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~

愛おしい…遥

萌夏がいなくなって十日が過ぎた。
電話での連絡はつくようになり、毎日朝晩に話すことはできている。
声の様子からはとっても元気そうだし、つらい思いをしている様子はない。
しかし、
「今はまだ帰れないの」
と何度会いたいと言っても決して会おうとはしてくれない。

正直もどかしいと思う。
この時代に会うこともままならない事情なんてそうないはずだ。
萌夏も俺もお互いを好きでいて、会いたい思いは同じはずなのに、萌夏にはそれを思いとどまらせる何かがある。
この数日俺はその理由を調べていた。
まだ全容とまではいかないが、少しずつ分かってきたこともある。
それは、萌夏のお母さんのこと。
小川皐月さん。旧姓は桜ノ宮皐月。
どうやら旧華族桜の宮家のお姫様らしい。
どういう経緯かはわからないが、勘当され家を出て萌夏のお父さんと結婚。数年後萌夏を生むと同時に亡くなった。

「宮家に関する報道の自粛は暗黙の了解になってるからなあ、いくら調べても詳しいことはわからないぞ」
最近は営業課長の仕事よりも俺のサポートに着くことが多くなった雪丸が入ってきた。

「ああ、わかっている」
それでも、今はそこから攻めるしか方法がないんだ。

「なあ遥、桜の宮家が小川を返さないって言ったらお前はどうする気だよ?」
いつもは部下としての態度を崩さない雪丸が、ため口で詰め寄る。
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