好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~
呆然自失の私を遥に任せたまま、山本さんはどこかに電話をし出した。
小さな声で忙しそうに話しながら、視線は部屋の中を見回している。

散らかったごみと、乱れたソファー。
何よりもしわになった服と部屋に充満する私たちの臭いが何があったのかを物語っている。
勘の鋭い山本さんのことだから、きっと気づいたはず。
だからと言って、SPである以上プライベートなことには口を出さない。
もちろん、自分の行動を後悔するつもりはない。
遥と過ごす時間は幸せだった。それでも、自分の恥部を覗かれたような恥ずかしさは消えない。

「搬送先はどちらですか?」
遥が山本さんを振り返った。

「帝都病院です」

帝都病院って言えば、都内でも有名な病院。
確か、おばあさまの主治医がいらっしゃるって聞いた。

「そこでしたら院長とも懇意ですし、よかったら僕が萌夏を送って行ってもいいですか?」
「いや、しかし・・・」

「大丈夫です、邪魔はしません。ただこんな状態の萌夏を一人にするのが不安なだけですから」
「ですが・・・」
SPとしては急な予定変更は避けたいらしい。

「私からもお願いします」
できることならもう少し遥と一緒にいたい。
それに、こんな時にこそ遥がそばにいてほしいと思ってしまった。

「わかりました」

結局山本さんが折れてくれて、私は遥の車でおばあさまが搬送された病院へ向かうことになった。
< 131 / 176 >

この作品をシェア

pagetop