好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~

衝撃の事実…遥


車で走ること20分ほど。
距離はそうないはずなのに、都内の移動は時間がかかる。
特に急いでいるときに限って渋滞に巻き込まれたりして、気持ちは焦るばかり。

「そのまま奥へ回ってください」
「はい」

SPの山本さんから「移動中は携帯を通話のままスピーカーをオンにしていてください」と言われ、その指示に従った。

病院の建物をぐるっと回りこんだところにあるVIP入り口。
我が家も入院するときにはここを使わせてもらうから、何度か訪れたことのある場所。
それでも、今日は特別に人が多い気がする。

「入口に車を止めたらそのまま降りていただけますか?」
「いいんですか?」
てっきり萌夏を降ろしたら帰れと言われるものと思っていた。

「はい。大旦那様から許可をいただいておりますので、萌夏様とご一緒においでください」
「わかりました」

こんな非常時に萌夏との同行を許すからには、俺の素性もすでに調べていることだろう。
平石の跡取り息子の存在を好意的に受け止めたのか、あるいは物の数にもならないと相手にされなかったのか、桜ノ宮家の意図はわからない。

「遥」

ん?
色々と考えを巡らせていると、一緒に車から降りた萌夏の足が止まっていた。

「どうした?」
「怖いよ」
震える声で言う萌夏。

「大丈夫、俺が付いている」

俺は萌夏の手をギュッと握りしめた。

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