好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~

別れ…萌夏

「何で、今更言うんだよっ」
応接室のドアに手を掛けようとした時、聞こえてきた声に自分の耳を疑った。

今応接室にはおじさまと遥がいるんだと聞いていた。
2人で何を話しているのか少し不安になりながら、私は駆けてきた。

幸いおばあさまの最後には間にあい、手をとりながら息を引き取る瞬間を迎えることができた。
おばあさまも穏やかな顔で旅立っていかれた。
その後着替えを手伝いお化粧をし、おじいさまと最後のお別れをしてやっと宮邸に帰る準備が整った。
これからしばらくは葬儀や何かで忙しくなるだろうし、遥とも会えないだろうからと急いでやってきた。
それなのに・・・

「萌夏さま、どうかなさいましたか?」
後ろに控えていた山本さんに声を掛けられ
「いえ、何でもありません」
と答えるしかない。

きっと山本さんには遥の声は聞こえていないんだ。
でも、どうしたんだろう。何があったんだろう。
目上の人に声を荒げるなんて、遥らしくない。

「お声を掛けましょうか?」
固まってしまった私に山本さんが聞いてくれるけれど、
「いえ、自分でできます」

フー。
息を吐き、トントン。
「萌夏です」
私はやっとドアを開けた。

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