好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~

嫁ぐ朝…萌夏

一月。
新年を迎えてまだ数日。
世間はまだ年明けの慌ただしさの中、ここ桜の宮家は別の忙しさに追われていた。

「萌夏さま、無理してでも何か召し上がってください」
付き添ってくれる女性が声をかけてくれる。

「はい」

食べないといけないのはわかっている。
今日は分刻みのスケジュールが組まれているから、少しでもおなかに入れた方がいいんだけれど・・・

「萌夏さま、失礼いたします」
お盆を手に入ってきたのは、お屋敷に一番長く勤めている徳子さん。

桜の宮家の奥向きを誰よりも知っている人で、おじいさまもおじさまも信頼している人。
私も日々の生活の決まり事から、宮家のしきたりまで困ったことがあれば徳子さんに聞いている。

「おにぎりをお持ちしましたので、時間がある時に召し上がってください」
とテーブルに置かれたのは本当に小さな一口大のおにぎり。

「着付けをしてしまったらまともに食事なんてできませんから、隙を見つけて召し上がってくださいね」

こういう気づかいができるのが徳子さん。
ありがたいなあと思いながら、私はおにぎりを一つ口に放り込んだ。
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