好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~
俺は空のことも礼のことも昔から知っている。

お互いに血のつながらない父親を持ついとことして共感する部分もあるし、平石財閥を背負う窮屈さも同じだ。
ただ俺と空が違ったのは、自分に素直になれたかどうか。
小心者で意気地のない俺は父さんに反発することも自分の思いを表現することもできなくて、優等生でできのいい息子を演じることしかできなかった。
世間的に見れば俺はできのいい跡取り息子で、親の言うことを聞かず問題ばかり起こす空は不出来な息子だったのかもしれない。それでも、嫌なことは嫌とはっきり言う空が俺はうらやましかった。
あいつのように生きたいといつも思っていた。

「遥」

ん?
急に空に呼ばれ、顔を上げた。

「何だよ」
その神妙な表情に、一体何を言うつもりなのかと恐怖心がよぎる。

「お前、幸せになれよ」
「はあ?」
何を言っているんだと口が開いたままになった。

「お前、ずっと無理してきただろ。だから・・・」
「空」

誰よりも身近にいて、境遇的にも俺に共感できる男。
一見わがままに見えて、実は計算高くてきれる奴。
高野空はそんな人間だ。
こいつだけは俺のすべてをお見通しらしい。

「お前が転べば、平石が危ういんだからな」
「空、お前がそれを言うな」

お前だって平石を担っていく人間の1人だ。
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