好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~

宮家の事情…萌夏

「大丈夫?落ち着いたかい?」
「はい」

お茶を待つ間に、私は遥に連絡をした。
『私は無事です。もう少し時間をください』それだけを伝えるつもりだったのに、喧嘩のようになってしまった。
遥の気持ちを考えれば、電話一本で納得してくれるはずないとわかっていながら、今はまだ何も伝えられなかった。
お母様が電話に出て、「何かあればすぐに電話しなさい」と言われ泣いてしまった。

「家の人、心配しているだろうな?」
「ええ、とても」
遥なんて、心配を通り越して怒り心頭。


「まずは、突然君をさらってきてしまったことを謝るよ。申し訳なかった」
座ったままではあったけれど、きちんと頭を下げてくださるおじさま。

それでも、「もういいですよ」なんてことは言えなくて、私は黙っていることしかできなかった。

たとえ縁の人間でも、黙って連れ去ればそれは犯罪。
それが分からないおじさんには見えない。

桜ノ宮創士さん。歳は・・・50歳くらいだろうか。
平石のおじさまより少し若く見えるけれど、優しそうなで温和そうな素敵なおじさま。
スーッと通った鼻筋と、頬の感じがどこで見たような気がするんだけれど・・・思い出せない。
< 76 / 176 >

この作品をシェア

pagetop