好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~

父のような存在…遥

久しぶりに萌夏とけんかをした。
たまたま目にしたSNSの写真に萌夏が男と映っていて、頭にきて叱ってしまった。

ちょうど一年前、逆恨みから事件に巻き込まれ大けがを負った萌夏。
その一因は俺にもある。と言うか、俺の側にいたから萌夏は傷つけられてしまった。
全ては俺が悪いんだ。
だから、どんなことをしても萌夏を守ると決心した。
もう二度と萌夏が傷つく姿を見たくはない。

「おはようございます。本日の予定です」
いつものように、礼がスケジュールを読み上げる。

俺の専務就任とともに、専属秘書として秘書課に移った礼。
それまで俺の秘書をしていた坂田雪丸は営業部に残り、今は課長として腕をふるっている。

「顔色が優れないようですが?」
大丈夫なのかと礼が見つめる。

営業にいたころはほぼため口で遠慮なく何でも言っていた礼だが、秘書になってからはなれなれしい態度をとることはなくなった。
「普段から気を付けないといつぼろが出るかわからないから」と敬語を使うようになり、役職で呼ぶようにもなった。

「少し疲れがたまっているだけだ。心配ない」
「本当に?」
「ああ」

きっと礼の前で取り繕っても、すぐにばれるとは思う。
それでも、自分から弱音を吐く気にはなれない。
この意地っ張りな性格をめんどくさいと自分でも思っているが、どうすることもできない。

「コーヒーをお持ちしますね」
「ああ、頼む」
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