好きになってもいいですか? ~訳あり王子様は彼女の心を射止めたい~
「ありがとう萌夏」

みんなでお茶をいただきおばあさまを寝室に送った後、おじいさまと2人になった。

「私は何も」
特別なことをした覚えはない。

おばあさまに会えて、私の方がうれしかった。

「創士から聞いたかもしれないが、家内は、月子はもうそんなに長くはないんだ」
「そんな・・・」
「元気でいるうちに、まだわかるうちにお前に会わせてやりたくてな、こんな強引な手段をとってしまった。申し訳ない」
「私は、そんなこと」
いきなり連れてこられて驚いたことは確か。
でも、事情を聴いてしまえば恨む気持ちにはなれない。

「できればこのまま、ここにいてくれないだろうか?」
「え?」
「皐月の娘として、月子の側にいてほしい。人生の最後くらいは幸せに送ってやりたいんだ」
「おじいさま」

母さんが親不孝をしたとは思わない。
母さんには母さんの思いがあったんだろうと思う、でも、そのせいでおばあさまは寂しい思いをしてこられた。
私は、そのことが自分の責任のように感じられた。

「無理強いするつもりはない。家に帰るのを止める気もない。でも、もしも月子のことをかわいそうだと思ってくれるのなら、側にいてくれないか?」
「それは、もちろん」
このまま消えるつもりはない。
でも、

「何しろこんな家だから、小さなことでも世間の目がある。月子の病状も、皐月の過去も、お前の存在も、今桜の宮家で起きていることは外に漏らしたくはない」
「です、よね」

世間から注目され鵜ことの多い平石の家にいるからこそ、想像はしていた。
おばあさまの側にいるってことは、この家に暮らすこと。
全ての事情を話せない以上、遥のもとには帰れない。

「どうだろうか、ここにいてくれるかい?」
「・・・」

当然、即答はできなかった。
自分の性格を考えると結論は見えているけれど、それでも迷う気持ちは消えなかった。
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